Creature Comforts

慢性的中二病

「All You Need Is Kill」

恥ずかしながら、この本がハリウッド映画化を予定している、今話題のライトノベルであるということを後調査で知りました。基本的には前情報なしの本屋でのフィーリングで、買ってしまうことが多いんです。特に最近はSFのにおいが強いものを好んで手を伸ばしてしまう傾向があります。

この、「All You Need Is Kill」はSFでループものです。舞台は近未来の戦場で、一兵士の主人公が敵との戦いの中で戦死したはずなのに、なぜか同じ日がまた始まってしまう、という状態を軸に物語が展開していきます。

物語のループもののカテゴリーはたくさんありますが、私のほうで勝手に三つに分けてみることにしました。
1.主人公も、読者もループ認知型
2.読者は知っているけど、主人公はループ認知していない型
3.主人公はおろか、読者もループに認知していない型

この物語は1に入るかと思います。2は涼宮ハルヒの憂鬱エンドレスエイトとかが代表的なものでしょうか。3は、漫画の封神演義をあげたいと思います。

この物語の1の主人公も、読者もループ認知型は、3に比べて圧倒的に物語の作りこみが難しくなってくると思います。なぜなら、3はループしていることがネタばれの軸として話を展開しやすいと思いますが、1は(2も含まれますが)ループが読者にわかってしまっている上での、話の展開が必要になります。そのネタはなにか、というところが勝負になってくるのかと思いました。

で、本作品ですが、ループの原因とか、その原因を作っている大本のSFの世界観など、とてもうまく構成されていると思いました。SFのスケールとして王道かつ、新しい手口のループの元凶のネタ、ならびにSFの世界観の展開をしていたと考えています。

一方で、あまり読んでいてあまり感動、心に刺さる感じが少なかったのも正直な感想になります。それは主人公ならびにヒロインのキャラとしての魅力が欠けていたことが原因になると思っています。自分のおかれた状況における怒りや戸惑い、抜け出すための試行錯誤、真の「仲間」を見つけたときの感動、をしっかり読者に魅せられれば、別れがきたときの衝撃度も半端なくあがってしまうと思います。この主人公たちはなんとなく運命に身を任せているだけで、魅力に欠けている感じがしました。せっかくの用意された舞台が少しもったいなく感じました。

映画では、このキャラの魅力も際立たせていけたら素晴らしい作品になるのではと期待しています。