Creature Comforts

慢性的中二病

ライムス名曲紹介#1:プリズナー No.1,2,3

Rhymesterの曲をひとつひとつ紹介して、何がすごいのかを自分なりに分析する完全自己満足規格の第一弾。最初にどの曲を紹介する曲は迷ったんですが、アルバム「ウワサの真相」から「プリズナーNo.1,2,3」って曲をご紹介させていただきます。

 


Rhymester/プリズナー No.1,2,3 - YouTube

 

まず初めに、ラップの曲に必要と不可欠な韻ふみ(ライミング)をみてみると、一小節と二小節の言葉の終わりが韻ふんでいて、三小節以降はまた別の韻で踏む形で進められています。基本ワンペアの韻。同じ韻をごりごり進めていくパターンが多いRhymesterにとってはとてもシンプルな韻のふみかたといってよいと思います。

ただし、この曲がすごいのは強烈なストーリーテリングなのです。オムニバスの短編が3つ並べられているような形で進められているのです。これは歌詞も貼り付けてあるので曲を聴きながら是非吟味してください。

登場人物は3人の囚人。この囚人は監獄のなかでそれぞれの自由を追い求めていく話が進められているのです。このことはベストアルバム「メイド・イン・ジャパン」のブックレットに記載されているので引用しようと思います。

宇多丸:まず”自由”に対する3つの態度の違いっていうアイデアが浮かんで、それを脱獄のメタファーでストーリーにしたらおもしろんじゃないかってDに伝えたんだよな。1番は環境に不満があってもあくまで自分の内面に自由を求める人。2番は環境に不満があったらそれを努力して改善することで実質的な自由を確保していこうとする人。3番はその枠組み自体から脱出することで本質的な自由を追求しようとする人。ただし、どこに行こうと人間が生きていく以上、”枠組み”はついて回るわけで、3番はひょっとしたら絶望的な戦いをしえちるのかもよ、というところまで含めて寓話にしようと。 

この言葉踏まえてもう一度歌詞を見てください。見事にこの3人の物語が描かれているのがわかるかと思います。これを気持ちい韻とボサノバ調のトラックで音楽的にも心地よいかっこいいのですよ。

このストーリーの内容はまんま私たちの社会生活のメタファーにもなっています。人間だれしも自由はよいという認識があります。自由になりたいと思っています。でもその自由っていったいどうすることなのか。どこまでやることが自由なのかはやはり人それぞれ違うのです。この曲で語られているのは、心の中で満足するレベル、環境の改善するために動く人、さらにその環境から抜け出そうとする人、の3タイプ。あなたの所属する会社やサークル、部活での環境で不満があった時にあなたのとる行動はどれでしょうか。一見、3番目が一番自由を求めていて、かっこいいと思うかもしれないですが、実は相当の覚悟がないと選べない茨の道なのです。もし、自由=楽な事、という認識を持っていた人が選択すると目も当てられない状況になる代物です。

この自由の定義を解釈し、映画のような物語をラップにのせて伝えるという、とても高度な技術がこの曲で使われているのです。