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 るろうに剣心 京都大火編/伝説の最後編 <ネタバレ>

るろうに剣心の映画みてきました。一応リアルタイムで原作を読んではまっていたものとしては良いところと、それは違うだろってところがいろいろ出てくるものがありました。その中でも原作の改変として一ファンとして許すことができないところがあったのでここに残しておきます。

 

それは、志々雄の活動が「歴史に残ってしまう」ようになってしまったところです。

そもそもるろうに剣心という物語は、実は幕末の維新剣士に伝説の人斬りがいて、今では殺さずの逆刃刀で弱いもののために剣をふるっている、というのが舞台だったはずです。志々雄編では剣心を受け継いで人斬りの後任をしていた志々雄が維新側の裏切り行為にあい、それから明治政府を恨み大きなテロを実行しようとしていて、それを剣心側がどうにか食い止めよう、というのがストーリーになっていて、その大まかな流れは原作を踏襲しているのですが、ここである大きなストーリーの改変が行われたのです。それは志々雄一派が巨大戦艦「煉獄」を浦賀に出撃させ、村を砲撃。また明治政府側も陸から反撃をして全面対決をさせてしまったのです。ちなみに原作では戦艦煉獄については描かれていますが、浦賀につくことはありませんでした。大阪の出航を剣心たちが食い止め、一泡ふかされた志々雄が別の日をもって剣心と最終対決をアジトで行う展開になっています。

原作・るろうに剣心全編のストーリーのバックグラウンドとして、「歴史の裏で実は・・」という部分をフィクションとして物語を広げているところにあります。たとえば大久保利通の暗殺・紀尾井坂の変は史実では不平士族によって実行されたものですが、るろ剣ではこの史実にちょい足しして、実はこの士族の計画を聞いた志々雄一派が先に暗殺を実行したのだ、でも実際の教科書では石川県士族がやっていることになっているよねー、本当は裏ではこんな計画があったんだよ、という見事なフィクションの膨らませ方をしているんです。

今回の志々雄の浦賀来襲の改変は確実に歴史に残るテロになってしまうでしょう。維新志士の残党が黒船を真似て浦賀に来襲しかしながら明治政府の返り討ちにあって失敗に終わる、ぐらいの歴史にはなるはずです。これってるろうに剣心の隠れた史実の裏という世界観を見事にぶち壊してしまっていると僕は思うんです。

 

・・・あとですね、これは多分原作ファンがみんながっかりしたところかと思うのだけど、十本刀の扱いが雑すぎる。こんなんだったら5本刀ぐらいにして、各々のバックグラウンドをしっかり描いてほしかった。安慈と宇水は名前がでない、特に宇水は全くの活躍の場をあたえられなかった。十本刀で一番目立っていた宗次朗も彼が志々雄に惚れた理由を全然描いていない。弱肉強食のフレーズだけをつかっているが、まったくもってそのフレーズがでてきた理由が描かれていない。なんか十本刀のコスプレをした人たちがいて、あとは原作をみんなそれぞれ読んでるからそこは各自拾うように!って感じでちょっと嫌でした。もちろん映画の尺の中でそれぞれを拾うと時間ないよーっていうのは分かるのですが、だったらいっそのことそれらしいコスプレさせなきゃよかったんじゃん、と思うわけで。

 

アクションシーンの見せ方がとても良く、「漫画的な超人」を不細工にせずに演出しているところはとても評価しています。それこそ前編の京都大火編をみたところまではかなり評価は高かったのですが、正直この映画への落とし込み方で、原作の前提を崩した「浦賀の来襲」と、敵方の素性をバッサリやってしまったところは、一人の原作ファン的には大減点だとおもいます。どうやら続編もやるようなフリも垣間見えたのですが、次回はその辺ももう少し練っていただけるととてもありがたいと思っています。