Creature Comforts

慢性的中二病

永遠の0 (講談社文庫)

永遠の0 (講談社文庫)

戦争をリアルに描くというのは難しいと思う。人の命を消耗する闘いにおいて、特に戦争の最中にいた当事者たちはそれぞれ万別の感情があったと思う。彼らの行動を美化しすぎるには醜く、卑下するには残酷すぎる。

本書は主人公とその姉が、零戦飛行戦闘員のちに特攻隊員として死亡した「実の祖父」の存在を知り、彼を知る当時関わりあった人の話を聞きながら祖父という人物を追いかけていくストーリーになる。

そこで祖父を知る人として語られる当時の兵士達の戦争の描写は非常に生々しい。自分は安全な場所にいながら、人の命を兵器と同じように消耗していき、敗戦一色になっても無謀な闘いを続けていく上層部への憤り。一方で、兵士や特攻隊員たちの悲痛な悲しみと、それでも国を自分が国を守るんだというプライド。立場や意見が違えども彼らの言は非常に重いものとして描かれており、戦後の平和な社会を生きてきた私が、無闇に戦争について語るのが非常にはばかれる。

しかし、これだけは確信している。やはり戦争というものは個人にとって不幸しかない話であり是が非でも避けなければいけない、という認識を強くさせられた。人の命とは、戦争とは。戦争にまつわる日が多い夏に読むべき一冊。