Creature Comforts

慢性的中二病

吉田 修一『悪人(上)(下)』

悪人(上) (朝日文庫)

悪人(上) (朝日文庫)

一人の女性の殺人事件から始まる、犯人のその後の生活と逃亡そして恋愛、さらにそれに巻き込まれていく関係者の心情を繊細に描いていく。

著者の作品、おはずかしながら始めて読ませていただいた。描写が非常に細かく描かれておりその様子が目に浮かぶようだった。さらにその細かい描写が複線となっていたりしてなかなか読み応えがある。まぁ細かすぎて間延びするところは否めないが・・・。
そして最後の締めくくり方はお見事で、なるほどと唸る展開だった。そして最後の光代の独白部分は2通りの考えができてしまいどっちが彼女の本心か非常に悩まされる。主人公の隠された本心がひょんな人間から漏らされたシーンのあとなんで余計に・・。

しかしこんな細かく心情や情景がテキストとして表現されているものの映像化は非常に難しいのではないかと思う。がんばれ深っちゃん

どうしても言いたい点を箇条書きで。

  • 光代の自首を止めさせる動機が弱い気がする。バスジャックに巻き込まれていたほうが説得力あるなぁ、と。
  • 被害者の女の子の描き方がとても秀逸でなかなか同情できないあたりが素敵。こういう子、いるよなぁ・・・。