Creature Comforts

慢性的中二病

「モダンタイムス」を読んで:デマと事実の間に

伊坂幸太郎さんの文庫版「モダンタイムス」を読了しました。これを読む前にもきちんと、この物語に続く前の物語である「魔王」もきちんと読んでおります。

この物語のテーマとしては、事実は作られるというところに集約しているだろう。そのテーマを軸に、伊坂さんらしい言葉の掛け合いやミステリー要素がたくみに組み込まれている。

モダンタイムスのテーマともいえる、事実は作られる、という事実。これはWeb界隈でもよくみられる話である。この辺は震災報道とかを間に当たりにしたわれわれは今、リアリティをもって捉えることのできるテーマかと思う。

魔王では、政治的なイデオロギーの主張をかすりそうなところで、はらはらさせながら、しかしそこに主眼を置くのではなく巧みなかわしを見せている。
おそらく作中で書かれている犬養首相とそのフィーバーは小泉元首相の郵政選挙がヒントになっているのかと想像している。私が読んでいるときもちょうど大阪市選挙で橋本さんが勝利した報道が流れていて、彼らの勢いにもなにか通ずるものを感じてしまった。

また、巧みなところといえば、拷問のシーンである。ストーリー上、拷問の描写は必要であるのだが、グロさをかなり緩和する描かれ方がされている。拷問されるのは味方の中でも拷問する側のプロで、悲壮感があまりない岡本を選んでいる。拷問をうける描写があるのはこの岡本だけ。また、かなり緊迫したシーンでも登場人物の言葉の掛け合いでやはり悲壮感が軽減されている。それがリアリティとしてあるのかないのか、という問題はあるかも知れないが、あきらかにPG-15の映画がPG-12に下げるような工夫がされている。それはおそらく狙ったものではないのではと思っている。