Creature Comforts

慢性的中二病

 柘榴坂の仇討: <ネタバレ>

この映画は評価が高いのは納得できる・・・ところもありながらちょっと気になる点も残ってしまったのが正直なところです。

安政七年三月三日、江戸城桜田門外で大老井伊直弼中村吉右衛門)が襲撃され殺害される。主君を守り切れなかったことを悔やんでも悔やみきれない彦根藩士・志村金吾(中井貴一)のもとに、仇を討てとの藩命が下る。明治の世になり時代が大きく変わっても武士としての矜持を持ち敵を探し続ける金吾。一方水戸浪士・佐橋十兵衛(阿部寛)は井伊直弼殺害後、俥引きに身をやつし孤独の中に生きていた。そして明治六年二月七日、仇討禁止令が布告される……。
 柘榴坂の仇討 | Movie Walker

全体としてとても日本映画的な美しさがでていると思いました。登場人物も名優ぞろいだけあって、心情の機微や立ち振る舞いなんかが繊細に表現されているのは間違いないと思います。

中井貴一演じる志村が明治という大きな時代の変化の中でもなお、侍であり続けようとする生き様、そんな旦那を陰で心配しながらも思いやる妻のせつ(広末涼子)。一報で敵役の佐橋(阿部)も物静かながら純朴さがにじみ出ているなど、魅力あふれるキャラクターがそろっていました。

 

ただどうしても気になる点があり、鑑賞中もそれが気になってしまってどうしようももありませんでした。完全にオチのネタバレになってしまうのですが、最終的に志村は13年探し続けていた敵討ちができる直前でそれを自らやめてしまうのです。そんな重要な心境の変化があったのですが、その明確なきっかけが描かれていないのです。(いるとしたら私は拾えませんでした。)

もちろん候補は考えられるのですが、どれも反証があがってしまうのです。

  • 仮説:「過去を背負いながらもひっそりと生きる佐橋を前にして、討つ気がなくなった。」-> そんな描かれ方はしていませんでした。
  • 仮説:「時代が変わった・仇討が禁止された」→ そんな気持ちで13年間探し続けていたの?
  • 仮説:「好きだった殿様の残した言葉が抑制」→ 13年もかけないでもっと早くに気付いてよ。
  • 仮説:「妻に迷惑がかかるからやめた」→ もう十分かけた上にこのタイミングでやめるんだ・・・。

僕はなにか心情が動く瞬間のきっかけの仕掛けを重視してしまう人間のようで、友人から「きっかけ」フェチだと言われたこともあります。でも、人間か変わる瞬間、つまりなにか成長する瞬間ってそれを呼び起こすトリガーがあってしかるべきだと思っていて、逆にそれが見えてこないと嘘くさく見えてしまうんです。直接的に示す必要はないのですが、なにかしらないとモヤモヤするのです。

今回の場合は13年間、周りにバカにされたり心配されながらも芯を通し続けていた仇討が目の前でやめてしまう、大きな心変わりがどっかにるはずだと思うのですが、それを読み取ることはできませんでした。もしくは意図的にそういう作りにしているのかもしれませんが。

どちらにしても、それが気になって最後の素敵なシーンも集中できなくなってしまいました。結局、モヤモヤしながら映画が終わる結果となってしまいました。。。